外 典   [PDF] 

「外典」とは正統な聖書と認められていない書
のことです。その中に「ニコデモ福音書」とい
う面白い書があります。

 イエスは十字架上でなくなってから、冥府
に行き始祖アダムとエヴァに会って話をした
り聖ヨハネに会うという話があります。

 洗礼者ヨハネは「イエスが来られる。彼に
お会いしたら、みなで礼拝しなさい。地上で
犯した罪を悔い改められる唯一の機会である」
と冥府でも死者を説いています。

 一方死の支配者サタンが登場し冥府の王ハ
デスとやりとりをしています。
「生前彼はわしの仕事の邪魔をして、病を癒
したり、せっかくの死者を言葉ひとつで生き
返らせたりしたのだ。どうかイエスをここに
と閉じこめておいてくれ」
それに対してハデスは
「死者を言葉ひとつでいきかえらせる者をど
んな力で閉じ込められるというのだ。彼が
ここに入れば、今までの死者をのこらず連れ
さってしまうだろう。だから入れるわけには
いかん」と反論しています。


 イエスは天国への門を開いて死者たちを
つれて冥府から出て行ってしまいます。最
後の場面ではイエスとともに処刑され、イ
エスに救いを求めた盗賊が十字架をかつい
でやって来ます。(新約外典 ニコデモ福音書)

 この外典は4世紀ごろ完成されギリシャ
語、ラテン語などに翻訳されています。
 サタンがこっけいな悪役として登場し、
冥府の王ハデスにやりこめられる場面など
は庶民にかなり人気があったようです。

 「外典」には他に「トマスによるイエスの
幼児物語」があります。新約正典は、イエ
スの誕生から十二歳までの期間が空白とな
っていますが、この外典はその間の神の子
の神童ぶりや奇跡などを描いています。
 イエスが過越しの祭りにエルサレムの神
殿で学者たちと話をしていて、彼を見つけ
た母マリアに「私が父のところにいるのが
わからなかったのですか」
と答える話はこの書の中に書かれています。

機会があれば、一読をお薦めします。
資料 自由国民社「世界の奇書」