ヤギ(山羊)  [PDF]   

 聖書に「ヤギ」という言葉が、新約・旧約あわせると
200ヶ所近く出てきます。羊と同じく古くからなじ
みの深い家畜であったことがわかります。

 しかし、キリスト教では、羊は善を、ヤギは悪を表
しています。ときにはヤギは悪魔の化身という扱い
をしたりします。そしてキリストが羊を右に、ヤギ
を左に分け、羊には救いを、ヤギには永遠の罰与え
る、そんな図が知られています。

 聖書でヤギが出てくるところを調べてみますと、
旧約聖書の最初のほうでは羊と同じように生贄と
して出てきます。
「贖罪の献げ物として、雄ヤギを毎日ささげねば
ならない」(エゼキエル 45・23 ) 

 ところが旧約書の後半のほうになると
「主なる神はこう言われる。わたしは羊と山羊、雄
羊と雄ヤギとの間を裁く」 (エゼキエル 34・17)
 「荒野の獣はジャッカルに出会い/ヤギの魔神はその
友を呼び/夜の魔女は、そこに休息を求め/休む
所を見つける。」 (イザヤ 34:14) 
まるで悪の象徴として描かれています。なぜでし
ょう?

 旧約書をもう少し読むとこんな言葉があります。
 「あの毛深い雄ヤギはギリシアの王である」(ダニ
エル 8:21)
 ここで登場する毛深いギリシャのヤギというのは、
ギリシャ神話のパンの神を指しています。キリスト
教は異教を排除していましたから、それを代表す
るパンの神は異教の象徴だったわけです。

 もうひとつ気をつけなければならないことは、反
芻動物の多くは匂いのある植物を嫌いますがヤギ
はこれを食べます。しかも雑食性で水分が十分で
ない乾燥地帯では草は根まで、樹木は樹皮や根も
食べてしまいます。植物は再生することができず、
そこは荒野となってしまうのです。遊牧民にとっ
ては大変なことです。
 現在ヤギによる砂漠化はかなり深刻な問題とな
っていて、ヤギは世界の侵略的外来種ワースト100の1
種に指定されています。

 こんな悪食であることもヤギの評価を下げてい
るのです。